Are You Experienced





「マジで?!さゆも?」
「ってことは絵里もついに?」
「うん。おとといの…夜に」
「れなもやったっちゃ」
「絵里どうだった?」
「すっごかった。すっごかった。ねぇ、どうしよーさゆー」
「落ち着いて、絵里」
「これが落ち着いてられるわけないでしょ!!!」
「しーっ!声が大きい」
「声が大きいっちゃ」
「おとといからドキドキが止まらないの。体もなんか変な感じだし。さゆは?」
「さゆみもした次の日は下半身に違和感あったかなぁ」
「れなもいまだに股の間がバリ痛かと」
「ねぇ…もうすぐ来るよね?どんな顔していいかわかんないよぅ」
「泣かないでー絵里ー」
「えーん。さゆー。会いたくないよー。でも会いたいよー会いたくないよー」
「あはは。絵里言ってることむちゃくちゃ」
「れなは会いたいっちゃ」
「あっ!来た!」
「ど、ど、どうしよう」
「どうもこうもないっちゃ」

6期の二人ががコソコソと楽屋の隅でわけのわからない話をしていた。
コソコソしてるわりには声が大きくて丸聞こえ。
そうは言っても具体的に何の話をしてるのかはさっぱり分からなかった。
ドキドキとか、下半身とか、そんな単語がやけに印象的でよからぬ想像をしてしまう。
まさかね、そんなまさか。え?でもやっぱりそういう意味なのかな…ってコラー。
自分の発想に軽くつっこみを入れてから、あらためて彼女たちを盗み見た。
亀はさっきから何をそんなに慌てているんだろう。
シゲさんはどうやらその理由を分かってるみたいだ。

楽屋のドアが開いて吉澤さんが入ってきた途端、さっきまで騒々しかった彼女たちが息を呑む気配がした。

「おはようございまーす」
「ぅはよー」

いくつかの挨拶の声がして(もちろん私もした)、吉澤さんはダルそうに返事をしながら鏡の前に向かって座った。
ふわああぁぁと大きなあくびをして口許をもぞもぞと動かしている。
あ、ガム吐いた。しかもゴミ箱に直接って。普通包むだろ、紙を。

「ん?どしたの亀ちゃん」
「あ、あの…その…」
「絵里ファイトっ」
「シゲさんはなんで応援してんの」
「がんばるっちゃ」
「それで亀ちゃんどうかした?」

亀がおずおずと吉澤さんの隣りに移動した。それについていく形でシゲさんも。
こちらに尻を向けている亀の表情は見えない…と思ったら鏡に映っていた。
やけに赤い顔をしているけれど風邪でもひいたのだろうか。
もしそうだったら大変だ。ツアーで忙しいこの時期に休んでる暇なんてない。
ましてや他のメンバーにまで伝染するようなことになったら、仕事に支障が出てくる可能性が高い。
そうなったらスタッフさんに迷惑をかけてしまうし、なによりファンの皆さんにも心配をかけることになるだろう。

「吉澤さん…おとといのこと、なんですけど…」
「おととい?なんだっけ?…あぁ、あれね」

おととい?何のことだろう。おとといって何かあったか?
…たしかおとといはメンバーの皆で吉澤さんの21回目のバースデーをお祝いした。
でもだからといってとくにおかしなことはなかった気がする。去年はアレだったけど今年は平和そのものだった。
その後のハロモニのスタジオ収録は何事もなく終わったし、発汗ロケもテンションうぇうぇで大成功だった。
私にかかればあんな坂ちょろいもんよ。汗ひとつかかずに終わったもんね。
逆にスタッフさんがバテバテであなたたちが発汗してどうするのっていう。
でもそういえば亀はやけにそわそわしていたような…。
坂を上ってるときも着ぐるみマッチョに話しかけられても上の空だったし。
しきりに時間を気にしてたのは誰かとの約束でもあったのかな?誰か……吉澤さんか?!

「あの日から絵里なんだか変なんです…」
「変ってどんな風に?」

アンタはいつも変でしょーが!って誰もつっこまないの?ちょ、えぇぇ〜。
チッ!シゲさんが邪魔で吉澤さんがどんな顔をしているのか分からない。でも声の調子からして機嫌は良さそうだ。
それにしてもシゲさん痩せたな。横から見るとありえないくらい細いってか薄い。
(作者注:この話は2006年末に書かれたものです)
まあ吉澤さんの薄さもかなりものだけどね。

亀は……うん、あれだ、亀のそういうところが私は好きだよ。

「体が変っていうか…ここがヤバイんです。痛くてどうしようもないんです」
「ほうほう。体ねぇ。それにここ?」
「はい。ここ」
「ここが痛いの?」
「はい。ここが痛いんです」
「それは困ったねぇ」
「正直かなり困ってます」
「どう思うよ、シゲさん」
「絵里のここ大変なことになってるんですね〜。すっごいかわいい」
「うん、可愛いねぇ」
「絵里は吉澤さんに抱かれて恋したっちゃ。れなもやけん、ライバルっちゃね」
「亀ちゃんのここ、あたしにどうしてほしいの?」

なんだこの会話。ここってどこだよ。
ああ、もうっシゲさん邪魔だから。そこ立ってると見えないのマジで。
しかも無駄にゆらゆらしない!肝心の"ここ"が全然見えないでしょーがアンタ。
シゲさんの動きにあわせて体を左右に伸ばしてみる。ここってどこ。あそこ?そこ?どこ?
うん、愛ちゃんちょっと黙ってて。私忙しいの。ほら見てわからない?
はいはい、それでも続けるのね。わかったわかった。って、お母様じゃないよあたしゃ。ブーケの作り方聞かれても。
え?さっきから何してるのかって?そうそう、ストレッチストレッチ。
こうして腰を捻ってね、普段から体をほぐしてっていないのかよっ!最後まで聞けーーっ!

「吉澤さん、治してください」
「ここを?」
「痛いんです、ここ。吉澤さんのせいで。ものすごく痛いんです、ここ」
「ここを?あたしに治せるかな?ここ」

いやいやいやいやいや!ちょっと!亀!どこだか知らないけど大丈夫なの?病院、病院行きなって。
吉澤さんは医者じゃないよ?リーダーだけどアホだよ?美人だけど超適当だよ?
アンタのそこがどうなってるか知らないけど治せるわけなんてないでしょー!
大体そんなこと言われたら吉澤さんだって困るでしょーが。
ていうかあなたたち、ここここここ言いすぎですからー!!

「吉澤さんしか治せませんよ?絵里のここは」
「よっしゃ!亀ちゃん今夜はスペシャルスウィートかつハードにいくから覚悟してね」
「絵里、よかったね。がんばって」
「あ、シゲさんもどう?こないだしたばっかだけど。イヒヒ」
「えっ…本当ですか?でも今日は絵里に譲ります。次は激しくお願いしますね」
「おう。今度楽しみにしててね」
「ごめんね、さゆ」
「ううん、いいの。だって絵里ずっと吉澤さんのこと本気だったもんね」
「れなも本気っちゃ」
「なんだよ、シゲさんは遊びなの?ヒーチャン悲すぃ〜」
「違いますよー遊びじゃないですって。あー、そんな可愛い顔されたらぎゅってしたくなっちゃう」
「絵里も絵里も。絵里もぎゅってしたーい」
「ウヒャヒャヒャこりゃたまらん」
「れ、れなも…」

ちょっとちょっと!なに言ってんですか!なにやってんですか!もうほんっとわけわからないですよ。
なに?モーニング娘。どうしちゃったの?私の知らないところで何が起こってるの?
妖しすぎる。妖しいにもほどがありすぎるこの会話。
どう考えたって、どんな真っ当な精神で聞いてもこの会話はアレだ。アレのことに違いない。
楽屋で抱きしめあっちゃって、一見微笑ましいですよ?期を超えた絆を感じますよ?
ついでに5期とも絆を深めてくださいね。ってそんなこと言ってる場合じゃないよ!!
でもね、絆っつーかなんつーかあれはアレでしょ。そんな会話つきで見ちゃうと…ひ、ひえぇぇ〜。
ちょ、ちょっと何やってんですか。そんな長ったらしい粘っこいちゅうとかしないでくださいよ。
吉澤さんアンタめっちゃニヤけてますけどリーダーですから!リーダーですから!
もう1回くらい言っておきますか?リーダーですから!ちゃんとしてくださいよ!りぃぃぃだぁぁぁぁぁ!!!
左右に後輩抱えて乳揉みまくるリーダーがどこにいる!!コラー。


あぁ、わかった。夢だ。これは夢だ。
ははーん、そういうことか。私の夢ってばやけにリアルになってくれちゃったもんだ。











   ノノハヽ
   ( ・e・)
  _| ⊃/(___
/ └-(____/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



  彡⌒/ヽ-、___
/ミ _/____/









くっ…くっく…あの新垣の顔ときたら。
まさか作戦がこんなにうまくいくとはね…恐れ入ったわ。自分のひらめきに。
ドアの隙間から見える光景に笑いが止まらない矢口って感じね。

「あ、保田さんじゃないですかー」
「た、た、た、高橋!」
「何してんですか。覗いてないで入ればいいがし」
「いいのいいの。アタシはこれからその、ハーブ山梨の10周年記念祭で花摘み仕事だから!じゃあまた!!」
「はぁ…お疲れさまでーす」

ふぅ。危ない危ない。
まさかこんなところから高橋が現れるとは。アタシのバックをとるなんてなかなかやるわね。
新垣に向かって一人でベラベラ喋ってたくせにいつのまに。油断も隙もあったもんじゃないわ。
あの子に見咎められることはまずないでしょうけど、万に一つの可能性もある。
あらゆる事態を想定して対策を講じなければ。

あの吉澤の調子ならそろそろ5期を制覇するのも時間の問題ね。
藤本は最初から落ちてるようなもんだし。久住は今回は対象外(吉澤は不満そうだったけど)。
6期は見事に陥落、そしてじきに5期も。あともう少しで全員だ、娘。全員。

ついに、ついにモーニング娘。が吉澤の手に落ちる!!!
そしてその後はこの作戦立案者のアタシが…ふふっふふふっ…。
成功報酬としてモーニング娘。に華麗に返り咲く!!!しかも5代目リーダーとして!!!

ぐふぅ。はっ!思わずヨダレが…あわわ。
アタシがリーダーとなり吉澤さえ手懐ければモーニング娘。は手中におさめたようなもの。
年の離れたやつらとのジェネレーションギャップなんて今さらどうってことない。
滝川の狂犬だって吉澤を横に置いておけばただの愛玩動物(ペット)に成り下がる。
ふふっ…アタシの天下はもうすぐそこ。

「けーちゃん」
「ふっふふ…」
「けーちゃん」
「ぐふっ」
「うわっけーちゃん汚いよ」
「誰が汚いのよ!!!!はっ!ご、後藤?なんでここに?」
「けーちゃんこそ何やってるのさ。ヨダレ垂れ流して。さっきから呼んでるのに全然気づかないし」
「ちょっと考えことをしてたのよ!アンタこそこんなとこで空中浮遊してんじゃないわよ!」
「なんかさー最近よしこおかしくない?」
「人の話聞きなさいよ…よしこがおかしい?そ、そうかしら?」
「…あやしい。けーちゃんなんか知ってるでしょ」
「べつに〜」
「………」
「はぁ〜。ったく、わかったわかった。話すから空中浮遊したまま無言で見つめるのやめてくれる?どこで覚えてきたのよそれ」
「えへへ。ひみつ」

結局後藤に無理やり約束させられて、山梨の仕事終わりに特急に飛び乗って新宿で落ち合った。
洗いざらい話してしまったけど後藤ならもう関係ないから構わないだろう。
誰かと秘密を共有したいという思いも少なからずあったし、アルコールの勢いも手伝って舌が滑らかになってしまった。
後藤は吉澤のテクに興味津々だったからおそらく近いうちに接触するかもしれない。まあ好きにすればいい。
私は後藤に固く口止めをして、帰宅後に焼酎を一本空けつつヤススレを10ほど立てて寝た。












  彡⌒/ヽ-、___
/ミ _/____/













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