SUPER PRIME MOVER





   二月×日 曇りのち雨

この前説明を受けた例の機械が今日家に届いた。
もっと小さい物を想像してたのに、このデカさは一体何だ。
間違えて洗濯機が送られてきたのかと思った。
とにかく邪魔でしょうがない。
そのくせ取説は、メモ書き程度の紙が一枚だけ。
これで「不安になるな」と言う方が間違ってると思う。

怖いんだけど、こうなったら仕方ない。
とりあえずコンセントを差し込んで、スイッチを入れてみた。
変な匂いもしないし、暖かくなる訳でもない。
暫くそのまま点けっぱなしにしていたが、特別何かが変わった印象はない。
今日はコイツのために部屋の模様替えもしたので疲れた。
さっさと寝よう。





   三月△日 晴れ

この機械に部屋のスペースを占領されてから一週間が経つ。
昨日スイッチを点けっぱなしにしたまま眠ってしまったので少し怖くなり、
風呂上がりに全身を鏡に映してみた。

身体に目立つ変化はない。
ってゆうか、最近ますますイイ女になってきている。
・・・と思う。
今なら水着どころかヌード写真集をやってもいいくらいだ。
セクシー8の頃の自分は何だったのだろう。
今でもフットサルをやめれば、またあの頃のように太ってしまうのだろうか。

テレビが面白くないので、久し振りに狼を覗く。
随分前に私が立てたスレが残っていたのにはマジで驚いた。
相変わらず亀ヲタは頭がおかしいようだけど。





   三月■日 晴れ

髪の色に飽きたので、美容院に行き染めてもらう。
昔ほど制約が厳しくないので、髪型も色もある程度自由に出来て嬉しい。
自分で染めてた部分の髪が傷んでて、トリートメントもついでにしてもらった。
前髪がかなり伸びて、ようやく顎の辺りまで届くようになってきた。
仕事の時はメイクさんがしてくれるからいいけど、
自分でシニヨンにまとめるのは結構大変かもしれない。

変化と言えば、ここのところ妙にメシがうまい。
体調もすこぶる良好だ。
これはやっぱり機械の影響なのだろうか?
身体への影響は一切無いという説明だったが、また腕に少し筋肉がついた気がする。
私は任務を達成した後、普通のオンナに戻れるのだろうか?
今更だとは思うが、やっぱり不安になってきた。





   三月▽日 雨

今日は疲れたー。
フットサルの朝練が終わった後でのハードなリハは相当辛い。
私もそんな歳になったのかと思うと切ない。
身体もしんどいけど、色々と考える事がありすぎて、そっちの方が疲れる。

最近妙に、コハルが気になる。
遂に機械の効果が出始めてるのか?
こんな感じは今までになかったものだ。
今回コハルが対象外というのが残念でならない。
そう思えるようになったという事が、イコールGOサインなのだろうか?
とすると、まずは誰から攻める?
やっぱり最初は手頃なカメ辺りからか。

疲れてるんだけど、なんか緊張と興奮で眠れない。
夜中二時間くらい狼を眺めて、三つのヤススレに引っ掛かる。
あの顔文字を見ると、たまに殺意が込み上げてくるのは内緒にしておこう。
芸能界一美人スレがあまり伸びてない。
なんてことだ。





   四月*日 曇り

仕事が終わった後、カメが一人残っていたのを見て、変に緊張してしまった。
暇そうだったし、やっぱり誘っておくべきだったのか?
当然カメは何も知らないから、いつも通りニコニコしてたけど、
私って結構、挙動不審だったんじゃないだろうか。

あーぁ、チャンス逃したなぁ。
こんな事繰り返してると、いつまで経っても任務を遂行出来ないままだ。
気合い入れて頑張らないと。
取り敢えず明日が勝負だ。
明日は久し振りに全員が一人部屋を貰ってるし。

ターゲットはやっぱり練習を兼ねて、六期三人の内の誰かにしよう。
いきなり本命を狙うのは私も緊張するし、失敗した時の事も一応考えておかないと。

・・・早めに寝よう。
今夜は機械のスイッチを朝まで点けっぱなしにして。
絶対成功する。
絶対成功させる。
絶対成功しなければならない。





   四月◇日 晴れ

つ、遂に・・・ヤっちまった・・・
もう脳みそバクバクで、今日はこれ以上書けない・・・





   四月○日 曇り

昨日は人生最大と言っても過言ではない、衝撃の一夜だった。
日記を付け始めて約10年、どんな事があっても最低五行くらいは書いてたと思う。
それなのに、僅か二行だけという昨日のページが、全てを物語っている。

何と表現すればいいんだろう。
熱湯の中を息継ぎ無しで延々と泳いでるような感じ?
もしくは、目を瞑ったまま全速力で走る怖さに似ていただろうか。
昨夜の私を客観的に見れば、さぞかし滑稽だったと思う。

今考えると、最初にシゲさんを選んだのは正解だった。
アイツは間違いなく真性だと思う。
私の立場で考えると、練習相手としては少し物足りなかったくらいだ。

それにしても、あのシゲさんがあんな事になるとは・・・
ジワジワと殺して、ゆっくりと地中深く埋めていく。
前の日から何回も繰り返しやってきたシミュレーション通りで、
思っていたよりも罪悪感はなかった。
昨日まで半信半疑だったが、あの機械のパワーは凄い。
NASAで開発されたというのは本当だったようだ。





   四月▲日 晴れ

二十一回目の誕生日をメンバーが全員で祝ってくれた。
ハッピーバースディを歌って貰って、ケーキのローソクを吹き消す。
それぞれが心のこもったプレゼントを用意してくれていて、
任務の真っ最中だというのに、最高に幸せな時間を過ごした。

誕生日会の後は、カメをこっそり誘う。
三人目という事で、随分と余裕が出てきた。
あの機械が凄いのか、私の適応力が優れているのかは分からないけど、
シゲさんや田中の時と違って、楽しむ事が出来るようになっている。

今までは、どちらかと言えばMっぽい方だと思っていたが、
まさか自分がこんなにサディスティックな性格だったとは。

カメの死に顔が瞼に焼き付いて離れない。





***





「・・・よっすぃ男化計画!? けーちゃん、何それ!?」
「あまり大きな声じゃ言えないんだけど・・・つまり、よしこを男に仕立てて、娘。達の性欲処理をしてもらおうって事」
「はぁ? 意味分かんない。ちゃんと説明してくれないと」

新宿にある焼肉屋の個室で、保田と後藤の二人は、七輪を挟んで向かい合って座る。
最近吉澤の様子がおかしいと思っていた後藤が、それとなく保田に打ち明けると一瞬驚いた表情を見せた。
何か知っていると確信した後藤は、渋る保田を誘って、この日の夕食に漕ぎ着けていた。

「・・・ごっつぁんの他に、ハローの中で、よしこが変だって気付いてるヤツ、いる?」
「分かんない。多分いないんじゃない? よっすぃ、元々が超変わってるから」
「それ聞いて少し安心したよ。ここで聞いた事は、絶対に余所で喋らないでよ?」
「うん」

女二人で食べるには尋常じゃない量の肉が運ばれてきて、二人は話を中断しビールジョッキに手を伸ばす。
六人掛けのテーブル一杯に皿が並んだところで、ようやく店員が下がっていく。

「ちょっと、ごっつぁん、タレものは後だってば。塩モノを先に焼かないと」
「だって、けーちゃん生レバとかユッケ食べながら飲んでるばっかじゃん。アタシ生もの食べれないし」
「いいから。また後で網を替えてもらうのって面倒臭いでしょ?」
「分かったよ。で、娘。の性欲処理って何?」
網の上に隙間無くネギタン塩を並べながら、後藤が話を戻す。

「事の始まりは、紺野が週刊誌の記者に写真を撮られたんだ」
「・・・マジ? 写真って、どんな?」
「男とツーショットの」
「・・・へぇーっ、あのコンコンが? あ、けーちゃん、この辺、もうイケる」
ネギを零さないように二つ折りにした肉を裏返していた後藤が、保田の皿に焼けたタン塩を盛る。

「ま、その写真は運良く事務所が買い取って事なきを得たんだけど、もし今そんな記事が出ると、どうなると思う?」
「相当ヤバいね。最近色々あったもんね」
「でしょ? ヲタ人気の高い紺野のスキャンダルなんて、娘。の解散になりかねない」
「で?」
「勿論その男とは別れさせたんだけど、放っておくとまた同じ事が起こるかもしれない。これは紺野だけじゃなくて」
「うん。あの子らも、もう18とかだもんねぇ」
「そうそう。ヤりたい盛りじゃない? あたしがそれくらいの時って、毎日ヤりまくってたもん」
(・・・嘘つけよ、ケメコのくせに・・・)
「ん? 何か言った?」
「や、何も言ってないです」
後藤はバケツのような大きさのピッチャーを抱え、残り少なくなっていたビールを一気に飲み干す。
ようやく塩モノを全部焼き終えて、自分の食べたかったカルビを網に乗せていく。

「ま、そこでよしこの登場になる訳よ。娘。達の下半身事情を面倒見て貰おうと」
「・・・マジで? 全員?」
「五期と六期ね。久住はまだ中学生だからいいだろうって事になってる」
「でも、よっすぃって・・・」
「そう。そこなのよ。アイツ、ボーイッシュだとか、オッサンキャラって世間では言われてるけど、
 実はこういう話って、物凄く苦手じゃない? 
 女子校に通って、バレー部のエースで、皆の憧れの存在だったんでしょ? だからレズって雰囲気に超敏感で」
「うん。アタシもそれで一時期、よっすぃとの仲がちょっと微妙な感じになった事あるもん」
「そこで、男化計画」
保田は二杯目のピッチャーを持ち上げようとするが、重くてジョッキに注ぐ事が出来ない。
結局後藤に注いで貰い、自分は鬼のような量のホルモンを焼き始める。

「だから、その男化計画って何よ?」
「精神的に男になれる機械っていうのを、よしこの家に届けさせたの。二ヶ月くらい前かな」
「何それ!?」
口一杯にカルビとご飯を詰め込んでいた後藤は、噴き出しそうになるのを必死に堪える。

「中身はただの空気清浄機なんだけどね。マイナスイオンが発生するヤツ。
 で、外側はそれっぽい感じの箱を、テレ東の大道具さんに作ってもらったんだよ。
 毎日寝る前に2〜3時間スイッチを入れるだけで、女の子に対して恋愛感情が生まれるって説明して」
「・・・それをよっすぃは信じてる訳?」
「まさか! 幾ら何でも、そこまでバカじゃないでしょ? アイツは全部嘘だってちゃんと分かってるよ。
 つまり『男になれる機械』という大義名分を与えてもらって、リーダーとしての責任感を果たしてるんでしょ」
「・・・ふぅん。大変だねぇ、よっすぃ」

「でもアイツだって結構楽しんでるみたいよ。亀井はよしこのテクニックに白目剥いて失神したらしいし
 道重なんて遠征先のホテルで潮吹かされたもんだから、おねしょ疑惑で散々からかわれて」
「へぇ、そりゃ凄い」
「あーぁ、あたしもよしこに潮吹かされたーい!」
「・・・」
ビール片手にホルモンを次々と平らげていく保田を、後藤は醒めた目で見つめていた。

「・・・何よ?」
「や、一つ聞きたいんだけど」
「何?」
「けーちゃんは、何でそんなに詳しいの?」
「や、だって、あたしがこのプロジェクトの発案者だもん。会長とつんくさんに相談されて」
(・・・もうちょっと他にいいアイディアはなかったのか、ケメコ・・・)
「ん? 何か言った?」
「や、何も言ってないです」

焼けたホルモンから出る煙をパタパタと扇ぎながら、後藤はふと気付く。
この件で免疫の出来た吉澤と、自分もそういう関係になれるかもしれない。
今は娘。のメンバーで手一杯だろうが、一段落ついた時にでも誘ってみよう。
後藤は満面の笑みで、保田のジョッキに生ビールを注いだ。





***





   四月□日 晴れ

年齢の若い順にヤっていって、今日でようやく一巡した。
この達成感は、とても言葉では言い表せない。
ミキとのエッチは妙に気恥ずかしいモノがあったが、
アイツが積極的だったお陰で、何とか上手くいったと思う。
私の胸を見て羨ましがるミキが超可愛かった。

・・・この任務は、いつまで続ければいいのだろう?
最初の話では、コハルを除くメンバー全員を手懐ける事だった。
二度とメンバーに悪い虫が付かないために。
そして、それは今夜で終わった筈だ・・・と思っていた。

しかし・・・私を見る皆の目付きが変わってきている。
シゲさんや田中は潤んだ瞳で、モノ欲しそうな表情をずっとしてるし、
カメなどは、次はいつ抱いてくれますか、などと露骨に聞いてくる。
五期の連中は私の取り合いでケンカを始める始末だ。

まぁこの機械さえあれば、私も嫌々やってる訳じゃないし、
コハルが対象年齢になるまで続けていこうかな。





    ノノハヽ
   (0´〜`)
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  彡⌒/ヽ-、___
/ミ _/____/













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