セイフクインバースデー






もうすぐよっちゃんさんの誕生日だ。しかもハタチ。記念すべきハタチ。

「よっちゃんさ〜ん。お誕生日プレゼントなにが欲しい?」
「うーん。それは当日まで秘密」

ウインクなんてしちゃってるけどさ、オイ。
秘密って、それはどっちかっていうと美貴のセリフでしょ。
もらう本人が秘密にしてどうするのよ。まったくアフォなんだから。
でもそんなよっちゃんさんがとっても可愛いから美貴はいつもメロメロ。

「秘密じゃ困るよー!よっちゃんさん、教えて?」

よっちゃんさんの目の前に立って腰に手をまわす。
ガッチリとホールドして離さない美貴の得意技。
よそ見をしないように目を見つめてよっちゃんさんの視界を美貴だけにする。
語尾に合わせて小首を傾げれば…ほら、もうよっちゃんさんも美貴にメロメロ。でしょ?

「へっへっへー。教えないよー」
「なーんでよー。よっちゃんさーん、お・し・え・て?」
「うわっ!美貴ちゃんさん…その上目遣いは反則…」
「あーん。よっちゃんさんこっち向いて〜」

意外に照れ屋なよっちゃんさんは、真っ赤になった顔を見られないようにと美貴の首もとに顔を埋めた。
ヨシヨシと頭を撫でてから少し背伸びをして、髪にキスをした。

「ほーらっ顔見せて?あと誕生日プレゼント、結局なにがいいの?」
「……ちゃんさん」
「ん?」
「美貴ちゃんさん」

もう〜よっちゃんさんってば。美貴だったらいつもあげてるじゃん。

「とりあえず、美貴ちゃんさん」
「ビールかよっ」

とりあえずってことはメインもあるんだよね?もちろん。
とりあえずって言い方がちょっと気になるけど美貴をあげるのは異存なし。
毎日あげてるけど誕生日にはとくにスペシャルな美貴をあげちゃうんだから。

「とりあえず美貴ね」
「そう。とりあえず美貴ちゃんさん」
「で、それから?」
「それから?」
「他にもあるんでしょ?」
「むふふ。どうでしょ」
「教えてよー!」
「どうしよっかな〜。美貴ちゃんさん知りたい?」
「知りたいよ〜。さっきから言ってるでしょ!」

おでこをピタッとくっつけながらよっちゃんさんの欲しいものを追求する。
時々チュウするのも忘れずに。
ホントは言いたいくせにわざと焦らすようなことをするよっちゃんさんはすごく可愛い。
他のヤツだったら頭突きのひとつでもお見舞いするところだけど。

「よーし!じゃあ教えてあげましょう!」
「うんうん。なにが欲しいの?」
「欲しいっていうかですね、ちょっと協力してほしいことがあるんですよ」
「協力?」

なんだろ。
ピアスとかカメラとかよっちゃんさんが欲しそうなものを想像していたのに見事に裏切られた。
協力って。一体美貴になにをしてほしいの?

「世界をね、セイフクしようと思いまして」



は?



えーと、いまセイフクって言ったよね?

セイフクっていうとなんだ、制服のことか?
ははーん、美貴に制服を着てほしいとかそういうこと?
やだもう〜よっちゃんさんってばエロいんだから〜。
そんなことなら誕生日じゃなくても美貴はいつでもオッケーだし。
制服ってどんなのがいいんだろ?やっぱりいろいろ取り揃えたほうが…

「…ちゃんさん、美貴ちゃんさん」
「あ、はいはい」
「聞いてた?」
「聞いてたよ。美貴どんな制服でも着るからね!」
「いや、そのセイフクじゃなくてね。
 あ、でも着てくれるならナースとかがいいな…って違う違う!違うから」
「えー!違うの?美貴ナース服着ちゃうよ?よっちゃんさんはドクターだね」

よっちゃんさんニヤニヤして嬉しそう。
そんな顔見せられたら美貴はりきっちゃうよ。
ナース服ってどこに売ってるんだろ。
矢口さんとか持ってそうだな。あとで聞いてみよう。

「ドクターとナースかぁ。ベタだけどイイなぁ〜」
「ベタだけどイイよねぇ〜」

二人でイイイイイイイイ言ってたらマコトが変な顔したからとりあえず蹴っといた。

「あっ!違うよ美貴ちゃんさん」
「うん?なにが違うの?」
「あたしが言ってたセイフクは制服じゃなくて征服だよ」
「よっちゃんさん漢字で会話しないでよ。まあわかるからいいけどさ」

なるほど征服ね、なーんだ。っていうかなんの話だっけ?

「だからね。世界征服したいのよ、あたし」
「セカイセイフクセカイセイフクセカイセイフク…」
「美貴ちゃんさんに手伝ってもらいたいの」
「セカイセイフクセカイセイフクセカイセイフク…」
「おーい、美貴ちゃんさーん?」



世界征服ってなんだ。



「えーと。とりあえず頑張ってね」
「うぇぇ!美貴ちゃんさん協力してくれないの?」
「あのね、美貴はよっちゃんさんが世界征服できるように心の底から祈ってるから。
 美貴のかわりにマコトを好きに使っていいよ」
「そっかー。美貴ちゃんさんが祈っててくれるならできそうな気がするよ!
 ヨッシャー!!マコトー!行くぞー!!」

ガッツポーズをしながらジャンプしたよっちゃんさんはやっぱり可愛い。
よっちゃんさんがなにを征服したってどんな制服が好きだって構わない。
美貴はよっちゃんさんが好きだから。
世界征服頑張ってね。

「矢口さーん、ちょっとナース服のこと聞きたいんですけどー」





「美貴ちゃんさん…世界征服なんかできるわけがないってマコトに言われちゃったよ…」
「はやっ!」
「うわーん!」
「ヨシヨシ。よっちゃんさんは悪くないよー。
 また頑張ればいいじゃん。美貴はずっと応援してるからね」

よっちゃんさんの誕生日には、やっぱりナース服を着た美貴をプレゼントしようと思った。










<了>


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