____ #10 ____






  ___ 「次は絶対に勝ちます!!!」 ___


大勢の観衆の前で、悔しそうに声高に宣言するキミ。
10番を背負ったその背中は、強くて、優しくて、そして暖かい___。



1. ___2005.03.14.08:30pm

今日の試合は、本当に悔しかった・・・。
みんな、疲れていたんだよね、本当は・・・。今までの練習の成果がちっとも出せなかった。
本当に悔しくて、涙が出てきて、みんな人目を憚らず泣いてた。
美貴も、ストレッチのふりしてよっちゃんさんの足を借りて泣いてたんだ・・・。
そっと優しく美貴の背中を撫でてくれたよっちゃんの手が暖かくて心地よかった。

「もうそろそろ並ぼう・・・。表彰式はじまっちゃうし。」
よっちゃんはみんなに声をかけていた。
「ほら、みんな涙拭かないと〜。最後までちゃんとしないとさ。」
「ほらほら、是ちゃんも〜。どうして泣くんだよ〜?ウチら是ちゃんのおかげで負けなかったんだよ?」
ホント助かったよ、アリガト。と言って是ちゃんの背をポ〜ンと叩きながら、
みんなの所を駆け回るよっちゃんの姿は、キャプテンそのものだった。

よっちゃんだって悔しかったんだよね・・・。
いつもより長くタオルに顔を埋めてたもん。でも、絶対に人前じゃ涙見せないんだから・・・。
そういえば、美貴もいまだに見たことないな、よっちゃん泣いてるとこ。
強い人だな、よっちゃんは。でも、ホントは・・・強がってるんだよね___?
そんな事を考えながら、美貴は目の前の10番を見つめちゃってた。
マズい、また悔しさがこみあげてきちゃった・・・。
(ごめんね、よっちゃんさん・・・美貴、ダメだったね)
心の中でそう思いながら背中の大きな10番におでこをゴツン、としてみた。

「クスッ・・・」
と笑いながら後ろ手にポンポン、としてくれたよっちゃん
(大丈夫だよ、気にすんな・・・)
よっちゃんの背中はそう言ってるように感じた・・・。



「みんな、次は絶対優勝しような!・・・んじゃ、お疲れ〜したっ!!」
ロッカールームに戻って、監督やコーチと簡単な反省会をしてから、
いかにも体育会系なキャプテンの挨拶で、今日はとりあえずお開きになった。
もし、優勝してたら打ち上げとかあったんだろうけど、やっぱ今日はそんな気分じゃない。
「お疲れさん、みんな気をつけて帰ってな〜。」
「お〜、いしか〜、足ちゃんとシップしとけよ〜。」
「まいちんお疲れ〜、またな〜。是ちゃんも川島も、今日はありがと〜。」
「コンコン、あんま食い過ぎんなよ〜、ののもな〜。」
やけ食いし過ぎると太るぞ〜・・・とかよっちゃんは努めて明るく声を掛けてまわっていた。

よっちゃん、なんかちょっとムリしてないかな・・・?大丈夫かなぁ?
ちょっと心配になったので美貴は何気なく傍にくっついていた。

「ふぅ〜っ・・・」
みんなを無事見送ったよっちゃんは、静かに大きくため息をついた。
疲れた顔になってるの美貴は見逃さないよ。
ホラ、やっぱりムリしてんだから・・・。もう、仕方ないな___。

「お疲れさま、よっちゃんさん。」
そっと手を握って指を絡めてあげた。いわゆる恋人繋ぎってやつ?
「ん、お疲れさま、美貴ちゃんさん。」
照れたように頬をぽりぽり掻きながら、ごにょごにょと呟いた。
「・・・え、んと、あのさ・・・」
俯きながらさらに、もじもじごにょごにょ・・・
さっきまでのキャプテンらしさは何処行ったんだか・・・?
「ん?どうしたの、よっちゃんさん?」
ホントは何とな〜く、判ってるんだけどね。でもあえて訊いてみる。

「んとさ・・・今日遅くなっちゃったじゃん・・・だからさ〜」
「美貴ん家泊まる?ってか、泊まりたいんでしょ?」
「うん!いいの!?」
大きな瞳をキラキラさせられたら、断れませんって。
こんな時のよっちゃんって、甘えっ子なんだよね。
っていうか、何となく今夜はこの強くて優しい、
でもホントはすごくシャイで繊細なよっちゃんが心配で
傍にいてあげたいって思ったんだよね。

「いいよ。明日は一日オフだし、久しぶりにまったりしよっか〜?ね?」
「ホントに!?やぁったぁ〜」
子供のようにフニャッとして喜んでるよっちゃんがとても可愛くて
そのふわっとした髪を撫でてあげた。
子犬のように目を細めて、気持ち良さそう・・・。
このままずっと撫でていたいけど、時間はどんどん経っていくんだよね。
ちょっぴりお腹も空いてきたし。
「んじゃ、そろそろ帰ろっか?」
「ん・・・。」
優しく髪に触れていた手に力を入れ、グヮシグヮシッとしてやった。
「・・・っ、もうせっかくのヘアスタイル乱れるじゃんかよ〜。」
「最初っからクシャクシャでしょ〜が。もう、帰るよ、お腹空いたし。」
もたもたしているよっちゃんの手を引っ張って、ロッカールームを後にした。

また、指を絡めてみる。顔を真っ赤にしてあさっての方を向いてるよっちゃん。
でも手をしっかりと握り返してくれた・・・。

ほんと、キミは甘えっ子に変身するとシャイでヘタレなんだから。
でも、こんなところがまた可愛いのだけれど。



2. ___2005.03.14.11:00pm

近くのファミレスで簡単に夕食を済ませ、コンビニで飲み物とか調達したりして、
家に着いた時には結構な時間になっていた。久しぶりの帰宅だなぁ・・・。

「あ〜、ほんっっとうに疲れたね〜。この3日間どの位移動してたんだろ?」
「福井行って、びわ湖行って〜、東京戻って試合だよ?よく考えたらウチら凄くね?・・・」
んな、疲れんの当たり前じゃんよ〜・・・とかぶつくさ言いながら
よっちゃんはベッドにダイブした。
「う〜ん・・・久しぶりに手足伸ばした気がする。」
「あのぅ〜、いちお〜人ん家なんですけど。」と隣に腰掛けてツッコんでみる。
けど、そんなツッコミを知っているのかいないのか、よっちゃんは
うつ伏せのまま、大きく伸びをするとむにゅむにゅと眠たそうな表情になった。
「しょうがないなぁ・・・じゃ美貴先シャワー浴びてくるから。」
「ふぁ〜い、行ってらっさ〜い・・・」
ちょっと眠らせてあげたかったので、先にシャワーを浴びてくることにした。



今、すぐそこにいるよっちゃんは甘えっ子モードで、
どうしようもなくフニャッとしてて、シャイでヘタレなんだけど、
それは、美貴と2人っきりの時だけ見せてくれるんだよね。

それも、よっぽど凹んだときとか、とてもつらくて不安な時とか・・・。

普段はガッタスのキャプテンとして、娘。ではサブリーダーとして、
メンバーみんなをうまくまとめているよっちゃん。
最近、すごく大人っぽくなったし、すごく頼れる存在だなって思う。
美貴だけじゃなく、みんながそう思ってるんだよ。

だから美貴はね、普段ついつい甘えちゃうんだよね。
一回り大きなよっちゃんの背中が大好きでつい抱きついてしまうし、
よっちゃんの腕の中が大好きでずっと包まれていたいって思ってる。
美貴がそんな時、よっちゃんは優しい笑顔で美貴が安心するまでいつまでも傍にいてくれる・・・。

だから今日は美貴がお返しする番かな?
よくよく考えたら美貴の方が少しだけお姉ちゃんなんだよね〜。

そんなことを考えながらシャワーを浴びていた。

さてっと、愛しいフニャフニャ王子様はまだ眠っているのかな____



バスルームから部屋に戻ると、眠っているはずの王子様は起きていて、
ベッドの端っこに座って俯いていた。
少し鼻をすする音が聞こえるし、肩を震わせてるように見えた・・・。

「よっちゃんさん・・・どうした?」
その声にビクッとしたよっちゃんは、慌てた様子で
「あ・・・ごめん、シャワー借りるよ・・・」
顔を見られないように俯きながらバスルームに駆けてった。

もしかして、泣いていた!?いや、明らかに泣いてたよね?
何を見て泣いてたのか気になり、辺りを窺ってみる。

背番号10のユニフォームとキャプテンマークがそこにあった___。



美貴だって「遅れてきたスーパーエース」と例えられているから少しは分かるんだよね。
試合の度に結果を残さなければいけない事のプレッシャー・・・。
まして、よっちゃんはエースである上にキャプテン。
美貴なんかよりもはるかに注目され、風当たりも強いってのも・・・。

だから、いつもよっちゃんはその重圧に負けないように、
常に強気のコメントを言ってみたり、強い言葉でメンバーみんなに気合を入れたり、
あえて、強い自分を演じよう、見せようとしているんだよね。
「自分がしっかりしなければ。」って感じで、ひとり突っ走ってたりして・・・。

時々思うんだ。苦しい時は美貴やみんなに頼ってもいいんだよ、って。
本当のよっちゃんはガラスのように脆く、
繊細なココロの持ち主だという事、美貴は知っているから。
つらい時も、ついひとりで全部抱えこんじゃう人だって事も・・・。

まぁ、美貴の前で甘えっ子になってるってのは少し進歩したんだけど___。



そんなことを考えているうちに、よっちゃんがバスルームから出てきた。
「美貴ちゃんさん、シャワーありがと。」
濡れたままの髪を無造作にタオルでガシガシ拭きながら隣に座る。
ちょっと小さな男の子か、シャンプー後のワンちゃんのような仕草が可愛い。
ってか、水しぶきがかかってくるんですけど・・・。
「わっ、もう冷たいって〜。ちゃんと拭いてからこっち来てよぉ。」
タオルを奪って丁寧に拭いてあげる。
ホントに小さな男の子を相手にしているような感じ。
「ごめん、美貴ちゃんさん・・・。」
謝りながらも嬉しそうに目を細めるよっちゃんさん。

絶対わざとでしょ?泣いてるの隠すためにさ・・・。

「・・・目が赤いよ?大丈夫?」
「だ、大丈夫、泣いてなんかないやい・・・」
「ホント?じゃよ〜く顔を見せて。」
「い・・・やだ、こっち見んな。」

くるっと後ろを向いて、ベッドの真ん中へんにあぐらをかいて座り込むよっちゃん。
ちょっと拗ねたような背中はいつもより頼りなく、小さく心細く見えた。
ホントに天邪鬼っていうか、素直じゃないっていうか・・・
堪らなくなって、その小さくなった背中を後ろから包みこむように抱き締めてあげた。

「よっちゃんさん、泣くのってかっこ悪くないよ。泣きたいときは素直に泣いてもいいと思うよ。」
「だって・・・恥ずいもん・・・美貴ちゃんさんに泣き顔見せたくないもん・・・」
「じゃ、今夜は美貴の胸貸してあげる。よっちゃんさんの泣き顔見えないし・・・。ね?」

俯いてるよっちゃんさんの前に回り、首に手を回しぎゅっと抱き締める。
いつもとは逆だけど、こんな時もあるよ。
いつも美貴がいっぱい甘えてるから、たまにはお礼しなくちゃね。

よっちゃんは一瞬ぴくっとしたけど、すぐ素直になったのかフニャッと胸の中に納まった。
このままベッドに横になると、胸の中で泣きじゃくっていた・・・んだと思う。
声を上げず、パジャマの胸の辺りに顔をグシグシとこすり付け、涙をぬぐっていた。
その度に美貴の頬に触れる、よっちゃんのカールのかかった髪がくすぐったい。

そんな情けないよっちゃんがとても愛しくて、その髪に何度もキスを落とした。
こんなよっちゃん見れるの美貴だけだもん___。

涙の理由、だいたいは分かってるけど、
よっちゃんの口から、自分の言葉で話してくれるのを待ってるね。
だから、今夜はずっと美貴の胸の中で甘えてていいからね・・・。

・・・ちょっと”π”好きなよっちゃんには物足りない胸かも知んないけどさ___。



3. ___2005.03.15.04:15am

よっちゃんを抱き締めながら、そのまま眠り込んだみたいで気付いたらもう辺りが白けてきていた。
泣き疲れたチビッコのように腕の中で少し丸くなって眠っているよっちゃん・・・。
安心したように、すやすやと寝息を立てている。

その髪型のせいか、星の王子様のようなその目にはまだ涙の跡が残っていた。
ふわふわした髪を撫で、涙の跡を指で拭いながら、瞼にそっとキスをした。

「う・・・ん、美貴ちゃ・・さ・」
ころん、と寝返りを打ったかと思うとまた胸に埋まってきた。
「おはよ・・・起こしちゃった?」
「う・・おはよ・・」
むにゃむにゃしながら、胸元に顔を埋め何度もキスをくれた。
「あっん・・もう、くすぐったいよ〜。」
「ねぇ・・・もう少しこうしてていい・・・?」
顔をすりすりしながら、まだまだ甘えモードなよっちゃんさん。

「いいよ、可愛いから特別ね・・・」
いつもとは逆ってのもちょっと新鮮かも。
「ねぇ、よっちゃんさん・・・」
「ん・・・?」
トロンとした目で見上げてきたよっちゃんの唇に何度も優しいキスをした。

___大好きだよ。キャプテンなよっちゃんも、
       甘えっ子なよっちゃんも、どっちも____

ちょっとデレ〜ンとしてキスを返してくるよっちゃんをぎゅぅと抱き締め、
2人で朝のまどろみに溶けていった・・・



4. ___2005.03.15.07:15am

どれくらい経ったろう・・・?
「あっ、しまった忘れてた〜!!」
腕の中のよっちゃんが急にムクッと起き出した。

「もう、耳元で大きい声ださないでよ〜。いったい何したの?」
「ね〜ね〜、美貴ちゃんさん、ウチのユニフォームは?」
「あ〜、ベッドに置きっぱなしだったから、よっちゃんさんの荷物のとこ置いといたよ。」
「そうそう、美貴ちゃんさんのと一緒に洗濯してもらおうと思ってバッグから出したらさぁ、
 試合のこととか思い出しちゃって・・・まぁ、その、アレだ・・・。」
ポリポリ・・・と頬を指で掻くよっちゃん。
「泣いちゃったんだよねぇ〜?」
その頬をツンツンしながら、わざと言ってみる。
「な、泣いてない・・・ってワケ・・・ないや・・・昨夜はごめんなさい。」
「もう、謝んなくっていいよ〜。拗ねたワンちゃんみたいだよ〜?」
ワンコだったら、耳が下がってんだろうな、そんな風に見えた。

「ホラ、洗ってあげるから洗濯物出しなさい。」
プードルのようにカールがかかった髪をクシャッと撫でてあげた。



シャワーを浴び、洗濯機を回しながら、ついでにTVを付けると
蝶ネクタイでキツネ目のあの人が映っていた。
あぁ、見たもん勝ちの時間か。
昨日の試合も映るかな・・・?

カレッツァに負けちゃったからな、内容はあまり期待できないかも・・・。
試合には一応負けなかったけれど、勝負には負けていたからなぁ。

それより、よっちゃん見るかな、コレ?悔しくてまた泣くかも・・・。

そんな事を考えながら、ベッドに腰掛けているよっちゃんの隣に腰掛ける。
少しの沈黙のあと、よっちゃんがゆっくりと口を開いた。

「10番ってさぁ・・・」
「背番号の事?」
「うん・・・10番って、ウチになんつ〜か・・・あの・・・力をくれるんだ・・・」

たどたどしい言葉で、よっちゃんが想いを口にしてる___。
さっきまでの甘えモードとは顔つきが違って、
キリリとしたキャプテンの顔になってる事に気付いた。

「なでしこの澤さんの期待とか、応援してくれるファンの人達の想いとか・・・
 あと、北澤さんや、みんなの期待とか・・・、ん〜と・・・なんつ〜んだろ・・・」

頭をクシャクシャとかき回しながら言葉を探してる。
そんなよっちゃんの腕を止めるように掴んで、下ろしながら手をぎゅっと握ってあげる。
仕方ないなぁ・・・、ヒントをあげるよ。

「いろんな人の想いが詰まってんだよね?」
「うん・・・だから、頑張んなきゃ、期待に答えなきゃって思うんだ。
 それがすごく励みになるし、力になるんだ・・・。いつもはね・・・」

そう口にして、よっちゃんは少し俯いた。

「でも、昨日みたいな時って、すごく重く感じるんだ・・・。
 もう、潰されそうで・・・逃げ出したくなるんだ・・・
 全て投げ出して、このままいなくなったらどんなに楽だろうって・・・」



真顔のまま、話を続けるよっちゃん___。
美貴は、そんなよっちゃんの横顔を見つめながら、手を握ってあげる事しか出来なかった。

「背番号10」の意味するコトは、美貴だって知っている。
それを背負うコトの責任や重みは相当のモノだってのも知っている。
試合に勝って、結果を残せた時は、良い事を記事にしてもらえるけれど、
負けて、結果を残せなかった時は、批判の矢面に立たされてしまう・・・。

できる事なら代わってあげたいけれど、簡単に代われるものではないし、
美貴にはとても務まらない・・・。きっと、他のみんなにも・・・。
だから、手を握ってあげる事しかできなかった___。



「・・・でも、ここで逃げたら、昔の・・・ダメだった頃のあたしに戻ってしまうから。
 ・・・うん・・・ここで踏ん張ってさ、前向きに・・・ん〜と・・・。」

そう言うと、よっちゃんはこっちを真っ直ぐ見つめ返す。
その瞳は一点の曇りも無く、澄み切って綺麗だった。。

「前へ、前へ、・・・次へ、次へって進んで行かなきゃなって思って。」
ヘヘッ、と照れたように鼻をこすりながら、ニカッと笑う。

「ん・・と、なんかゴメン、うまく言葉になんないや。」
頭を掻きながら、はにかむよっちゃんさん・・・。

「大丈夫、ちゃんと分かったよ。それに嬉しかった。
 よっちゃんさんが考えてるコト、ちゃんと美貴に話してくれて。」
包み込むように隣に座るよっちゃんの肩を抱きながら、その短い髪に指を絡める。

「だって、いつも1人で全部しょいこんでる感じだったから・・・。
 少しは美貴や、チームのみんなに甘えてもいいんだよ、ってずっと思ってたから。」

髪に絡めた指をほどいて、優しく撫でてあげると、
よっちゃんはコテン、と肩にもたれかかってきた。

「でも、よっちゃんさんがつらい時にこうしてあげる事しかできないんだけどさ。
 ゴメンね、頼りにならなくて・・・。」
「ううん、そんなことないよ、あたし、凄く救われてる。昨夜も凄く救われたんだ。
 美貴ちゃんさんが傍にいて、泣いてるあたしを包んでくれて、ぎゅってしてもらって、
 そんで・・・チュゥしてもらって・・・あと、◎△●※・・・。」
「もう、噛んでるし〜。真っ赤になんなくていいよぉ〜。」
「ゴメン・・・だから、ん〜と・・・おかげで初めて誰かのために頑張ろうって思ったんだ。
 モチ、自分の為ってのも、チームやいろんな人の為ってのもあるけど・・・
 その・・・美貴・・・のために頑張らなきゃな・・・って思った。」

「だから、んと・・・勇気をくれてアリガト」
そういってよっちゃんは、頬に優しくキスをくれた。

ホント、ぶきっちょなんだから・・・でもすごく嬉しいよ。


  ___ 「次は絶対に勝ちます!!!」 ___

TVの中のキミの瞳は、澄み切って高く遠くを見つめていた。
凛として10番を背負う姿は、やっぱり強くて優しくて・・・すごく愛しい___



5. ___2005.03.15.07:50am

「また、甘えるときがあるかも知んないけど、そん時はゴメン・・・。
 昨夜なんて、ウチ凄かったよな・・・コドモだったでしょ?ホントごめん・・・。」
「うん、もうね、コドモだったりワンコだったり・・・
 さっきTV映ってた人と同じ人かよっ、って思っちゃったよ。」

照れ隠しにわざとツッコんで笑ってみた。

「・・・でも、どっちのよっちゃんさんも美貴は好きだよ。
 いっぱい甘えさせてくれるよっちゃんさんも、いっぱい甘えてくるよっちゃんさんも・・・。」

よっちゃんの首に両腕を回し、ベッドに押し倒す。
2人でゴロンとなると、またよっちゃんが胸に埋まった。

「もう、今度は美貴が甘えたかったのに・・・」
「へへ・・・だって居心地がいいんだもん・・・美貴ちゃんさんの胸・・・
 あったかくて、やわらかくて・・・」
「ほら、TVに映ってるワンコみたいだよ・・・ホントそっくりだって〜」

ワンワン!って言いながら、じゃれついてくるよっちゃんさん。
くすぐったいけど、可愛いから今のところは許そうって思ってました。けどね・・・

「も少し、フカフカだったら申し分ないんだけどなぁ〜」

・・・ピクッ。今なんつった?
ってか、ちょっとヤな事思い出したんですけど。

殺気を感じたのか、甘えていた動きを止めるよっちゃんさん・・・。

「あ、いやいや・・・それはその・・・」
「あのさ、忙しくて聞くの忘れてたんだけど、この前の美貴の誕生日のアレは何?」
「アレって、そ、その〜・・・やっぱデカいのが良くね?」
「だからって、あんな胡散臭いバストアップサプリとか、エクササイズブラとか贈るかフツー!?」
「だって〜ちゃんとしたの選べなかったし、マ○キヨとか入ったらコレ面白れ〜って思って・・・」
「ふ〜ん・・・あっそ。」
「いや、ほんとジョークだって。ちょっとしたブラックジョークってやつ?
 あ・あの・・・怒ってる・・・よな・・・?」
「もう、勝手にしろっ!オッパイ星人!」

傍にあった枕を投げつけ、ベッドを後にする。
しゅん、とした顔がチラッと見えたけど、見ないフリしてやる。
ただでさえ、近頃”岡π”にうつつを抜かしてるんだから・・・。
気付いてないフリしてるけど、知ってるんだからね。このπ好きが。
さっき、よっちゃんが好きって言ったけど、前言撤回しよっかな?



6. ___2005.03.15.08:20am

怒った勢いで洗濯物をぱんぱんっと広げて干していく。
よっちゃんのも、一応干したげる。
背番号10のユニフォーム、美貴のより一回り大きいんだよね・・・。
昨日のように頭をコツンとしてみる。
悔しさと嫉妬と申し訳なさ、いろんな気持ちが渦巻いてちょっとだけ泣けてきた・・・。

___ もう、よっちゃんさんのバカ ___


「美貴ちゃんさん・・・」
突然、後ろからよっちゃんが抱きついてきた。
「あの、ゴメン・・・悪かった・・・」

そう言って、前に回していた腕をすっと放した。
その瞬間、胸元にキラリとシルバーに光る物がぶら下がっていた。
慌ててよっちゃんの方を振り返る。

「よっちゃんさん、これ・・・」
「あの、昨日ホワイトデーだったじゃん・・・昨日渡そうって思ってたけど、
 あたし、あんなだったじゃん・・・でね、1日遅れで悪いけど・・・」

欲しかった、カワイイ形のネックレス。
前に1度だけ一緒に買い物行ったときに見ただけだったんだけど・・・

「覚えててくれてたの・・・?」
「・・・ったりめ〜じゃんよ。この前やっとオフになったから
 ようやく買えたんだから・・・誕生日の時は忙しくて買いに行けなくて・・・
 そんで、あんなんプレゼントになっちゃったんだけどさ。」

顔を真っ赤にしながら、わざとぶっきらぼうな口調でまくし立てる。
でもその後、真っ直ぐにこっちを見つめて言う・・・。

「あたし、ずっと美貴のコトしか見てないよ。
 そりゃ、あたし、普段アホばっかやってるし、
 いろんなメンバーが声掛けてくるから、それとなく愛想ふりまいてたりするんだけど、
 でもね、ココロの中は美貴のコトばっか考えてんだって・・・。
 早く美貴に逢いたいって、ずっと傍にいたいって。
 ・・・それに、あたしが、あんなコドモみたいになっちゃうのも・・・美貴の前でだけだし。
 美貴のコトがとてつもなく好きだから、つい甘えちゃうんだ・・・。
 だから・・・だからさ・・・」

ぎゅっと抱き締めてくれて、耳元で囁いた。

「泣かないで・・・ね?」


ごめんね、よっちゃんさん。
美貴、さっきまでいろんなヤな事考えて涙ぐんでたんだよ。
よっちゃんがどうしようもないエロでバカでヘタレで・・・、って思ってたから。

でも、今の涙は違うんだ。美貴、すごく嬉しかったんだもん・・・。
よっちゃんがこんなにまで美貴のコト想っててくれてるんだって、はっきり分かったから。


「ごめんね、美貴ちゃんさん・・・まだ怒ってる?」
「・・・もう、怒ってないもん・・・嬉しいんだもん。」

昨夜とは逆に、今度は美貴がよっちゃんの胸の中に顔を埋め涙を拭った。
よっちゃんの胸だってあったかくて、やわらかくて、居心地がいいんだから。

「ホント、カッコ悪い渡し方だよな〜。もうちょっとカッケ〜く決めたかったのにさ。
 優勝してたら、昨日いいムードで渡そうって思ったのに・・・。」
「いいよ、そんなカッコ付けなくて。ってか絶対よっちゃんそんな上手く渡せないクセに。」
「ひっで〜・・・ね、美貴ちゃんさん・・・」
「ん?」

よっちゃんはそっとキスをくれた。
涙の跡をそっと拭うように優しく何度もキスをくれた・・・。

「よっちゃんさん、今度こそ美貴が甘えていい?」
「ん、いいよ。」
「じゃ、抱っこ。」

首に腕を回し、ピョンっとよっちゃんに抱きついた。

「うぅ・・・重いってぇ〜、筋肉痛なんだってば・・・」
「だって、近くで顔を見たかったんだもん・・・。ね、よっちゃんさん。」
「なぁに?美貴ちゃんさん。」
「次の試合こそ優勝しようね。」
「おうよ!」

2人でニカッと笑いながら、深くキスを交わした・・・。
春先の穏やかな風に吹かれて、オレンジ色の10番がはためいていた___。




___fin.






え〜、元忍者、今はスパイ・・・ホントはパーマ屋の寅ですw。初書きなので、拙い文で申し訳ないっす。
3月のガッタスの試合のその後・・・のおはなしです。普段はキャプテンとして、チームを牽引するよっちゃん。でも、美貴ちゃんさんの前でだけはコドモになってしまう、そんな、ちょい甘甘なみきよしを書いてみようと思い、今に至った次第なのです。『ガッタス』ネタ、そしてまさかの敗戦&ホワイトデー、タイミング的にあの日の試合が舞台にピッタリかと思ったワケです。あまりガッタスを切り口にした小説ってのは(自分が見た感じですが)なかったから、新鮮かな?と思ってみたり・・・w。いや、サッカーシーンってのは書けないんですけども、ハイ・・・w。
この小説をうpしてもらう矢先、矢口さんの件があり、正直掲載するのを延ばしてもらおう(或いはやめてもらおう)と考えてました。でも、八王子や群馬でのレポで、吉の頑張ってる姿を聞いて、コチラも前向きに行こうかなって事でうpしてもらう事にしました。
もしかすると、続編、というか短編のアイデアが頭の中にあるのですが、まぁ、それは後々・・・。(2005/4/18)

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