キミガいるトイウコト






「よっちゃん…よ…っちゃん…すき…すきっなの…ぉ…っ」


「───んっ……っ」


キングサイズのベッド
広すぎるバスルーム
───冷たい、床で。


仰向けになったまま、右手に絡みつく透明な液体を
ヒカリのない虚空に翳すと、なぜかそれは鈍い光を返し艶めかしく揺れた。


「…かっこわる」


大好き
大好き
大好きだよ
大好きすぎて気が狂いそうになる。


彼女が触れなくなって数ヶ月。
首筋は、胸元はキレイナ肌色になった。
彼女が触れなくなって数ヶ月。
もう無理だ、と言っても繰り返される行為のために
残っていた腰の気だるさは既に無い。
彼女が触れなくなって数ヶ月。
美貴の、指は


「よっこいせ」

あの人のように立派ではない腹筋を駆使して上半身を起こすと
左手でティッシュを2〜3枚取り、


消した。


同様に下腹部と床についたモノを同様に乱暴に消すと、
おもむろに大きな、大きな冷蔵庫を開けた。
ひやりとした風が火照った頬に心地よい。


何気なしにすぐ目の前にあったオリーブの瓶。
一粒取り出し口に含んでまた扉を閉める。

意味なんて無かった。
お腹が空いていたわけでもよく彼女が作ってくれたカクテルが
懐かしかった訳でもなかった。


薄い塩の味が美貴は好きだった。
シャワーも浴びずそのまま大きな彼女の中へと身を沈めた。

もう彼女の匂いのしなくなったそれは、それでも美貴を
優しく包んでくれた。
──不思議と、少しだけ湿っぽかった。

そのままの状態で、何時までも、いつまでも美貴はオリーブ
を口の中で転がした。


そしてまた、浅い眠りに落ちていく。
そう。
少しだけ痛む胸のリズムは、鼓動なんだ。


オリーブは、転がる。











(2005/4/12)

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